本文へスキップ
1.Murai式人工雪生成装置誕生まで 
※お願い ここからはNHK「プロジェクトX」風に読んでいってください(笑)。
Akinokoは大学卒業から25年以上雪結晶とはまるで関係ない人生を送っていた。

あるとき、ふと、どうしても自分で中谷宇吉郎の人工雪結晶を自分で見たくなった。
でも資料なんて何もなかった。何をどうすればよいかも全然わからなかった。
中谷宇吉郎の「雪」岩波文庫を見つけた。何度も「雪」を読んだ。
枕元にノートを置いて、アイディアが浮かぶとメモを取った。

ペルチェ素子の存在を知った。金ノコとドリルとアルミ板を使って何度も試作品を造った。
材料はネットで調べ、PC部品を通販で一か八かで買った。
失敗を繰り返した。段ボール箱には金属の廃棄物がたまっていった。

4ヶ月後、-15℃まで冷やすことに成功した。水蒸気を加えると、小さな結晶ができていた。
目の前が明るくなった。

筐体、観察用の窓の構造を考え始めた。
-25℃まで冷えるMurai式第1号が完成したのは構想から1年、製作を始めてから半年後。
システム完成はさらに半年後のことだった。
  


  実用新案登録済  第3106836号
制作中のようす Murai式の心臓部「冷却ユニット」 (Ver.4)
   実用新案登録:第3106836号

Akinoko's Page(リンク復旧工事中)
1号機はラトビアでおこなわれた「雪と氷との対話展」に出展(2005〜2006年)され、その後雪の科学館に常設展示されています。 詳しい経緯等は旧「Akinoko's page」のMurai式のページに細かく書いてありますので、興味があればご覧ください。
(一部リンク切れ等の不具合が残っています)

2.第1期 2004年〜 : いろいろな結晶を作って遊ぶ Murai式による人工の雪結晶
雪結晶は生成時の温度と湿度(水蒸気量)によって、形状が変わります。Murai式は電圧ダイヤルだけで自由に温度・湿度を変えることができます。だから、結晶の形も自由自在。自然に見られるあらゆる結晶を造り出すことできます。

針状結晶
気温が-4℃〜-8℃の時は長い結晶ができます。成長が早く、写真の物で1.5ほどあります。

角柱結晶
-9℃〜-14℃でできる結晶。

樹枝状結晶:おなじみの形だが-16℃〜-20℃の狭い範囲でしかできない。
成長途中で温度・湿度条件を変化させたときの結晶

左:角板結晶の条件(-17.5℃)で湿度を上げると、角から樹枝状結晶が成長する。
右:針状結晶の条件(-9.2℃)から温度を上げて角板の条件にすると先端に樹枝状結晶ができる。
 
角板結晶:-20℃近くの水蒸気が少ないときに現れます。
その他にも当時作成した人工雪結晶の写真が旧akinoko web pageの人工雪のページに置いてあります(リンク切れ等の不具合あり)。     
2007年 第7回東京書籍自然科学フォトコンテスト 最優秀賞受賞 作品
人工雪結晶生成装置で作ったいろいろな雪結晶
   
      
 
ここで再びプロジェクトX風に、、、(笑)
いろんな結晶を作って、ひとりで遊んでいた。
たった1℃温度を変えるだけで豹変する結晶を見て、中谷宇吉郎になった気分だった。

誰かに見せたくてAkinoko's Pageに写真を載せた

ある日、北見工業大学の知らない先生から1通のメールが来た。

突然、事態が動き始めた。

2007年大学院博士課程に社会人入学、Akinokoは仕事を休職した。
いきなり所得ゼロの研究生活が始まった。
3.第2期 2007年〜 : 研究としての人工雪結晶 結晶の生成条件の精密測定、そしてより低温へ  
大学院での研究のため、内部に鏡面露点計など測定器(鏡面露点計)を入れる必要があり、新しいバージョンのMurai式を製作。同時に全体システムをつくりました。 

低温室内に組み上げた装置全体:中央がMurai式装置
露点計以外、全部自費なんだよね、当たり前だけど、、
-8℃以上の温度での針状結晶
成長が早く、短時間で長さ1cmを超える
−12℃前後でのScroll・屏風状と呼ばれる結晶
壁面端がみんなくるっと巻いているのが特徴

円筒形の結晶

角錐状に広がった結晶
−14〜18℃の板状の結晶
この温度域では、おなじみの樹枝状、扇形が多く見られる

扇状結晶

樹枝状結晶の枝のうちのの1本
右:樹枝状の枝の一本に光を当て、反射させて裏側から撮影したもの。
平面ではなくてたくさんの凹凸からできていることがわかる。
   
-19℃付近での結晶   

角板結晶:低湿度のときにできやすい。

扇形結晶:成長と共に年輪のような線ができる
   
-25℃以下の結晶(低温型結晶)
低温域では交差角板の他、いろいろな形状の結晶が同時にできる。超マニアックな世界。
  

角柱結晶:低温でも水蒸気量が少ないときは角柱結晶がよく見られる。

交差角板

 
矢羽根形をしている交差角板結晶の先端部 
 

厚角板と交差角板の混在 
   

御幣結晶と不等辺の無垢角柱
 
グローバル分類(2012)で骸晶四角形結晶(CP6a)と分類される、四角形に見える結晶

矢印は結晶境界の成長方向
 
交差角板、鞘状の結晶等の混在
-30℃を下回る温度域での結晶生成+露点計測実験には手法的に大変手間がかかり、時間的にも数十時間を要するので大変。  
低温型結晶の3D写真
複雑で立体的な構造は写真では把握しにくいので3D写真を撮影して研究に役立てた(ホントは遊び)。
 
平行法で見るように作ってあります
   
4.第3期 2017年4月〜 : 極低温への挑戦と試行錯誤 Murai式Ver.4 7号機、 Ver.5 8号機6cm大型ペルチェタイプ
極域、高緯度での条件=-40℃以下では、それ以上の温度域とは異なった結晶が見られることがわかっています。
2017年からはMurai式でそれを再現しようと試みていますが、これがまあ大変。

最新型 低温タイプMurai式装置(右の箱)→
-49.7℃までの雪結晶生成実験が可能

2重筐体によるMurai式低温タイプ 人工雪結晶生成装置
  
二重筐体試作1号機と真空断熱板の性能テスト
 
冷却ユニットメンテナンス・超高熱伝導グリス採用
 
観察窓の防露システム
 
2重安全装置システム
  

柱状御幣結晶

放射針結晶

砲弾集合結晶

御幣状結晶

長い砲弾結晶
でも、なかなかうまくいかないんだよねぇ。このあたりの温度って難しい!    
おまけ:雪結晶生成へのエアロゾルの影響を調べる

 左半分:アルコールで洗浄  右半分:カオリナイト粉末塗布
 
5.第4期 2020年〜 : 高解像度画像取得への挑戦  Murai式9号機 8cm 透過照明タイプ 
デジタルの時代にふさわしい高解像度画像を撮影することを目標に、透過タイプの9号機を製作。

天文で培った高度な処理で解像度0.1μmを目指し,
撮影系、画像処理系の構築を含めて新しい取り組みを始めています。

ただし、ハードルは高く、いつゴールにたどり着くかは不明。

扇形結晶の焦点深度拡張合成のテスト
 
 
焦点深度拡張・復元処理後の樹枝状結晶
 
右上と同じ樹枝状結晶の枝の成長過程 3.68mm/h
 
3時間で成長した低湿度での角柱結晶

 -27.3℃での御幣状結晶:CP71 氷柱御幣と呼ばれるモノ
 
主枝先端の成長線
 
交差角板と砲弾の組み合わせ

角板結晶の3D画像(平行法)
角板結晶の中央付近から交差角板結晶が立ち上がっているのが分かります。 
試行錯誤は続く、、、、


AkinokoのMurai式による人工雪結晶関係論文
2005 ペルチェ素子を使用した対流型人工雪生成装置の製作, 雪氷 67_341
2011 鏡面冷却式露点計FINEDEWによる人工雪結晶生成時の湿度測定, 雪氷73-1, 3-14
2012 対流型装置を用いた-4℃から-40℃でび人工雪結晶, 雪氷 74-1, 3-21
 

オマケ 1
5年半かかって2012年9月に学位:博士(工学)をいただきました。
遊びが、いつの間にか遊びじゃなくなる(仕事でもない)という結果に。
人生とはどう転回するかわからないもんですね。
北見工大の亀田貴雄・高橋修平両先生には本当にお世話になりました。

  
オマケ 2
Murai式装置1号機は中谷宇吉郎雪の科学館に寄贈し・常設展示され、これまでに20万人以上の方に雪の結晶を見ていただいています。
科学館で作られている結晶は、本家akinokoが作るよりも美しいです。
職員の方々の職人技です。
結晶をのぞき込む見学者 Murai式での人工雪結晶(樹枝状結晶)
     
メモ:Murai式の歴史 旧webpage「Akinoko's page」のMurai式のページ
 2003.6 計画・基本構造考案
2003.9 製作開始
2003.9 初めて氷点下へ
2003.10 プロトタイプver.0.9(0号機)完成 人工雪結晶初めてできる
2003.12 ver.2.0完成(1号機) -25℃到達 
2004.1〜3 暫定ダイヤグラム作成
2004.4 石川県教育センター研究紀要にて発表
2004.7 冷却水循環型システム完成
2004.9 日本雪氷学会彦根大会(滋賀県立大学)にて発表
2004.11 Ver.2.2稼働
2005.7 日本雪氷学会誌「雪氷」に論文「ペルチェ素子を使用した対流型人工雪生成装置の製作」を発表
2005.10.16 中谷宇吉郎雪の科学館「子ども雪博士教室」で実演
2005.11〜12 1号機をラトビア国立自然史博物館に展示・実演
2005.12 Ver3.0  9cm type 完成(2号機) 
2006.1 Ver3.5 低温型8cm long type 作成(3号機) 2006.4 旭川西高・平松氏に納品
2006.3.12 Ver2.0:1号機改良型を中谷宇吉郎雪の科学館に寄付・常設展示
2006.3 NHKの取材・28日放送
2006.3 北見工業大学に9cmType Ver3.2(4号機)納品
2008年5月 北見工業大学光工学研究室に8cm透過Type Ver.4(5号機)納品
2008年6月 三重県総合教育センターに8cm Ver.3.3(6号機)納品


2011年 雪氷学会「雪氷」への論文発表 その1
「鏡面冷却式露点計による人工雪結晶生成時の湿度測定」: 雪氷、71(1) 
2012年 雪氷学会「雪氷」への論文発表 その2
 「対流型装置を用いた-4℃から-40℃での人工雪結晶の形態と生成条件  −鏡面冷却式露点計による高精度湿度測定に基づく結果−」:雪氷(2012)

2017年低温型の開発開始
2017年6月 6cm超大型ペルチェタイプ(7号機)作成・テストも-50℃に到達せず
2017年7月 改良・2重筐体・真空断熱低温タイプ作成(8号機) -50℃到達
2020年4月 8cm 透過type 完成・運用開始(9号機) 
   
 6.補足
雪結晶を人工的に生成することによって、 雪結晶の生成条件、生成機構を明らかにする取り組みは、1930年代に中谷宇吉郎よって始められました。その後もMason、Hallett、小林禎作ら多くの研究者が様々な人工雪装置を開発し実験、近年もBaileyやLibbrechtなどによって新しい装置が開発され研究が進められています。
 
様々な人工雪結晶生成装置
形式は対流型・拡散型・自由落下型、そして目的は研究・教育と多くの装置が開発されている。
   
   
当サイトの全ての画像・文章の著作権はMurai.Akio=Akinokoにあります。
無断使用等はご遠慮ください。 

過去に無断で本WebPage内の写真の商業使用があり、その際には50万円の賠償金をいただきました。
無断使用・盗用には法律に則り、厳しく対応します

 

Topへ戻る